【がんばるばい熊本】熊本地震から5年
熊本地震発生当時、チームは神奈川に遠征中でした。3連戦の中日に起こった前震の後、正直、気持ちの整理がつかないまま試合に臨みました。 熊本に残してきた家族、友人から被害状況を聞くと、水や食べ物を確保することすらも困難な状況になっていて、インターネットなどでバスケットボールを見れる状況には到底無いことが分かりました。
熊本ヴォルターズは、『バスケットボールを通じて元気や勇気、感動をお届けする』との理念の元に立ち上げたチームです。しかしこの時ばかりは、大災害の前ではスポーツが持つ力を届けることすら出来ない無力さを痛感させられたことを今でも鮮明に覚えています。
その後本震が起こり、残りのリーグ戦が続行不可能になったことで、僕たちは宿泊先近くのスーパーで持ち運べるだけの飲み物や食べ物、生活用品などを買い込んで直ちに帰熊しました。
練習で毎日通っていたホームアリーナ(当時)の益城町総合体育館は避難所となり、大勢の人たちが寝泊まりをされていました。
天井は抜け落ちフロアには残骸が散乱している目を覆うような惨状であり、避難されてきた大勢の皆さんは通路に押し寄せ、不安な様子で身を寄せ合っていました。
その状況を目の当たりにして心を痛めたのと同時に、今はバスケットボールで元気を届けることよりも、自分たちに出来ることは何なのかを考え、直ぐに行動に移すことにしました。
全国のバスケットボールファンに熊本の現状を発信して、足りない物資を集め避難所に届ける活動を開始しました。また、災害支援募金活動やクラウドファンディングに取り掛かりました。 物資が行き渡るようになった時期からは、全国からバスケットリングやボールを寄付して頂き、公園や学校の運動場などに設置する活動や、選手・スタッフによる屋外でのバスケットボール教室を順次展開していきました。
避難所生活で大変な思いをしているであろう子ども達が、元気に走り回る姿も見て、一度は無力だと感じたスポーツの持つチカラを再び信じれるようになりました。
また、その姿を見て私たちも元気をもらい、熊本ヴォルターズの存在意義も強く感じることが出来ました。
この5年間。
地震で辛い経験をされたことなど、自身の人生を重ね合わせて、同じく地震から立ち上がるヴォルターズの歩みに熱い想いを込めて応援頂いた方も多いのではないかと思います。
熊本は地震からの復興を辿っており、避難所となり多くの方々が身を寄せ合った益城町総合体育館は建て替えられ昨年リニューアルオープンしました。
昨年起こった豪雨災害では再び自然災害の猛威に襲われ悲しみに打ちひしがれることになりましたが、つい先日には熊本城天守閣の完全復旧など明るい話題も多くなってきました。
熊本ヴォルターズはB1昇格を目指して戦ってきましたが、昇格をかけた入替戦では3点差の惜敗に泣きました。レギュラーシーズン地区優勝で歓喜に沸くものの、プレーオフホーム開催では1点差で敗戦、またもやB1にあと一歩届かない悔しさを味わいました。
昨季は新型コロナウイルス感染症の影響で、シーズン中止となり無念な思いもしました。
振り返れば、ヴォルターズの応援をしていただくことは、決して楽しいことばかりでなく、皆様に悔しく辛い思いをさせてしまったことが多くあったかと思います。
だからこそ、何度打ちひしがれても、どんな困難の状況に置かれても、絶対に諦めない姿勢をコート上でお見せすることを止めることはありません。
その姿をご覧いただき、応援してくださる皆様の人生の糧にして頂ける存在でありたいと思います。
これからもバスケットボールを通して元気や勇気、感動を届け続けることをヴォルターズが存在する限り続けていきます。
熊本地震後にシーズン中止となり経営危機に陥った際には、本当に多くの皆様からのご支援によってチーム存続することが出来ました。改めまして心より感謝申し上げます。
これからも感謝の気持ちを常に持ち続け、地震後の活動で紡いできた地域の皆様との深い絆を大切にしていきます。そして、これまでと変わらず私たちに出来ることは何なのかを考え、地域の皆様のため、応援して頂いているファンの皆様のために行動を続けていくことを誓います。
2021年4月16日 取締役社長兼GM 西井辰朗